2024年度 公益社団法人 春日井青年会議所第56代理事長、齊藤 洋大より所信表明です。
あなただけのJCを
<はじめに>
世界を一変させた新型コロナウイルス感染症が落ち着きをみせ、社会はより多様性を受け入れる新たな段階へ進み始めようとしています。春日井JCもこれからの時代を見据え、本年度から「ひと」「まち」「組織」の魅力である「春日井力」を推進する第5次⾧期ビジョン・第8次中期ビジョン達成への道を歩み始め、今年はそのはじめの一歩となります。魅力的な「ひと」「まち」「組織」を想像したとき、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。
魅力の内容は多義的ではありますが、私が考える魅力は、他の意見や考えを尊重し受け容れている寛容さです。寛容な「ひと」「まち」「組織」は魅力的であり、だからこそそこには多くの人が集まっています。
では、今、私たちの周りは寛容で魅力的に映っているでしょうか。技術の進歩により、モノやサービス、情報が簡単に提供できるようになった結果、即時性が求められ、余裕が無く窮屈さや不自由さを感じていないでしょうか。また、インターネット上でのいわゆる炎上が日常化し、「○○ハラスメント」という言葉が多く生み出され、失敗が許されないという閉塞感を感じてはいないでしょうか。こうした不自由さや閉塞感の背後には不寛容があり、不寛容による衝突や失敗を恐れて当たり障りのないものが蔓延し、本来あるはずの一人ひとりの輝く個性が色あせてきています。
そこで、この現代社会の不自由さや閉塞感を打開していくためには、まずは他を受け容れる「寛容」を広めていく必要があると私は考えます。
国、文化、人種、宗教などの隔たりなく世界中に存在するJCこそ、寛容な社会に変革してゆく起点となるべきです。そして、2024年度、私たち春日井JCが中心となり受け身ではなく積極的に寛容を広めることで、その先に一人ひとりが輝く個性で溢れた色鮮やかな社会にしていきましょう。
<共創力の育成>
未知の課題が発生したときに重要なのは、他人と協働しながら、創造力をもって解決していく共創力豊かな人財です。この共創力をもった人財を育成していくことが、変化の激しい現代には必要であり、そのために私たち春日井JCが、人々の共感力の向上と、革新的な発想力をもつイノベーターの育成を行っていかなければなりません。
当たり前のことですが、人は一人ひとり異なります。それは、外形的なことはもちろんのこと内面においてもです。また、同じ人であっても、その時々、場面、境遇によって、発言や立ち振る舞いは異なるでしょう。日常に発生する些細な問題から大きな社会課題に至るまで、その本質を捉え解決に向けて協力していくためには、そうした一人ひとりの違いを理解し寄り添う共感力が必要です。そして、共感力を養い、他人を理解し寄り添うことができれば、より多く人との協働につながるでしょう。共感力を向上させ、社会に存在する様々な課題を自分たちで解決することのできる人財を育成していきましょう。
また、社会を動かす発見や発明、偉大な記録や成果の裏には、常識や過去に囚われない柔軟な発想があります。それは、ときには荒唐無稽と思われるものであったとしても、直ちに否定していては革新的な人物は生まれません。未来が不確かな今では、現状維持は衰退につながります。だからこそ、型にはまらない自由で柔軟な発想に着目し、それを伸ばしていく必要があるのです。そうすることで、自らが主体となって新たな価値を創造できるイノベーターを育成していきましょう。
<地域力の推進>
持続可能なまちであるためには、住み暮らす人々が自分たちのまちに関心を持ち、自分たちでまちの良さを向上させていこうとする地域力が必要です。そのために、私たち春日井JCは、住み暮らす人々が、まちの課題に対して当事者意識をもち連携することを促し、潜在的なまちの資源を活用することで、人々がまちに対する誇りと愛着を持てるようにしていかなければなりません。
多様化するまちの課題に対応するためには、そこに住み暮らす人々が、自分たちのまをより良くしようとする意識を持たなければなりません。この地域に根差す私たちが当事者意識を持ちそれぞれの強みを活かし一丸となることで、多様な課題が解決できるのです。当事者意識を向上させるために、この春日井のまちで、⾧年行政や他団体と協力してきた春日井JCが鎹(かすがい)となり、地域の連携を構築していきます。そして、地域を連携し、この春日井に多くの人が訪れる契機を創出することで、人々のこのまちをもっと良くしたいという意識を向上させていきます。
また、私たちは、自分たちが住み暮らしているまちの価値について、身近であるがゆえに十分に気づけていません。まちのことを最もよく知る私たちJCだからこそ、私たちはもっとこのまちに目を向け、そこにある資源を発見することができるのです。そして、発見した資源を開発し、最大限に活用していきます。そうすることにより、この春日井に住み暮らす人々はまちの価値に改めて気づき、さらには、私たち春日井JCと市民が共にその価値を一層高めていくことで、人々のまちに対する誇りや愛着を醸成して参ります。
<福祉力の強化>
誰もが夢を描けるためには、社会全体で助け合い、互いに尊重しあうことのできる福祉力の強化が必要です。そのために、私たち春日井JCが、次代を担う全ての子どもが安心して夢を語れるように、また、障がいがあってもそれも一つの個性として受け入れることができるようにしていかなければなりません。
子どもが安心して夢を語ることができなければ、明るい豊かな社会とはいえません。豊かにみえる日本でも、ヤングケアラーや子どもの貧困の問題があり、次代を担う子どもたちの中には将来のことを考える余裕のない子がいます。そして、その実態を外部から把握することが難しいことや、様々な問題が複雑に絡まっており解決に多面的なアプローチが必要なことが、この問題をより難しくしています。まずは、身近なところでも次代を担う子どもに問題が発生していることを社会的にも認知と理解を向上させていかなければなりません。そのうえで問題を抱える子どもたちを応援ができる関係性を築くことで、全ての子どもが明るい未来を描けるようにしていきましょう。
障がいをもつ人を「チャレンジド」と呼ぶことがあります。挑戦するという意味の「チャレンジ」を語源とし、挑戦する使命をもった人々という意味で、障がいがあることを積極的に捉えようとする取り組みです。ともすると、障がいがある人に対して、弱者として救済すべき存在と考えがちです。しかし、障がいもその人らしさとして自立した一人の人間として認めなければ、誰一人取り残さない社会は実現できません。技術が進歩した今だからこそ、その技術を最大限生かしチャレンジドの活躍を推進することで、誰もが尊厳をもち活躍できる社会を実現しましょう。
<会員力の向上>
春日井JCを、個々のメンバーが能動的にJC活動を行う会員力溢れる組織とするには、多種多様な人が集まり、共通した目的のもと常に意識を変えながら運動を展開していかなければなりません。
JC運動を大きく発信し展開するためには、多種多様な同志を増やすことが一番の近道です。JCは自営業者や経営者のメンバーが多いですが、品格ある青年経済人であれば、どのような立場であっても入会が可能です。むしろ、様々な立場のメンバーがいるからこそ、様々な視点での意見やアイデアが生まれ、市民を巻き込む力強い運動が起こせるのです。そして、会員拡大活動もJC運動の一つであり、直接市民に対してJCの理念を伝え、意識変革を行う機会であることを忘れてはいけません。そのことを常に念頭に置き、一人でも多くの志を同じうする者を仲間として招き入れることで、より大きく、そして効果的なJC運動を展開して参りましょう。
意識変革団体を掲げるJCでは、私たちメンバー自身も常に意識を変革していかなければ、能動的な活動はできません。そのためにはLOMメンバーが烏合の衆であってはなりません。共通した目的意識と情熱をもっているからこそ、強い結束力と柔軟な発想力による変革を続けることができるのです。まずは、改めて自分たちの所属するJCの意義を確認する必要があります。そのうえで、交流する場を設け、互いの持つ考えを知り理解することで、常に他へ意識変化を促しあえる同志へと共に成⾧していきましょう。
<組織力の構築>
私たちJCが運動を起こすためには、JCメンバーが団結し担いを実行していく組織力が必要です。そのために、一人ひとりのメンバーが活躍できる環境をつくり、さらに、メンバーがそれぞれもつ経験や知見を全員で共有し展開していかなければなりません。
ここ数年で情報発信ツールは発展し、誰でも手軽に情報発信が可能な時代となりました。春日井JCもあらゆるツールを使い発信していますが、発信だけを考えていては意識変革団体であるJCの魅力を十分に伝えることは困難です。重要なのは、情報の受け取り側に発信側の意図が伝わっているかを検証することです。そうすることで、より洗練された伝達力が生まれます。また、出向や各種大会への参加は、経験や知見を広げることのできる絶好の機会です。しかし、ただ出向や参加をしただけでは、その一人の経験や知見だけで終わってしまいます。それを他のメンバーと享受し春日井JCでの活動に活かすことで出向や大会参加の価値はさらに高まるでしょう。情報の伝達、経験や知見をフィードバックすることによって、春日井JCの価値を向上させましょう。
所属するメンバーの能力を最大限に引き出すためには、メンバーの組織への信頼が必要です。そして、変化を嫌い、ルールや慣習にただ従うだけでは誰からの信頼も得ることはできません。時代は常に変化していることを忘れず、何のためにという目的や役割を第一に考え、変化に即した最善の組織運営を行っていきましょう。春日井JCがどんな変化にも対応できる組織となり、メンバーからの信頼が増し、今以上にメンバー一人ひとりが活躍できる環境を構築していきます。
<おわりに>
私は春日井JCに入会し、今年で12年目となりますが、年数、役職、出向を経るうちに「JCとはこういうものだ」「JCはこうあるべき」と思い込むようになっていた時期がありました。
そうした中、あるセミナーの中で「自分だけのJC」という言葉が私の耳に残りました。思えば、JCメンバーも一人ひとりが違い、JCとの関わり方や、求めるもの、考え方も違います。それを、私の思うJCのあり方という枠に当てはめようとすることは、他の人からすれば不自由なことであり、閉塞感を与えてしまっていたと思います。私は、自分が不寛容な人間になっていたことに気づかされました。
それぞれが思うJCがあって良い、それぞれが考えるJCを進むことが、その人を成長させるだろう。私は、自分自身が寛容な考えを持たなければならないと改めました。そして、これはJCに限ったことではありません。家族、友人、仕事など人生の様々な場面においても、独りよがりにならず、一人ひとりの違いを尊重していかなければ、その人の色である魅力を感じることはできません。その考えに至ったとき、私は余裕ができ、より人生が豊かになったと感じました。
もっとも、誤解されたくないのは、寛容と無関心は異なるということです。国連事務総長を務めたコフィーアナン氏は、「寛容とは、人間の多様性に積極的かつ前向きに関わること」だと述べています。つまり、寛容になるには、無関心で受動的であってはならず、能動的でなければならないということです。
私も、それぞれの違いを認めた上で一人ひとりが自分だけのJCを歩めるように積極的かつ前向きに働きかけます。そうすることで、私と同じように多くの人々がJCでの気づきが人生をより豊かにする経験をすることができるでしょう。
一人ひとりが自分だけのJCを歩むことができれば、春日井JCは自然と人が集まる組織となり、そのような春日井JCが起こす運動は、必ずやひとを惹きつけることができる魅力的なものになるでしょう。
2024年、あなたしかできないあなただけのJCを私と共に歩んでいきましょう。